安心の介護を提供するためには、まず介護職員が元気で健康でいることが大切です。しかし介護職の仕事として、高齢者や障害者など介護サービス利用者の身体を持ち上げて移動させる業務があり、こうした業務を繰り返していると、どんなに筋力のあるスタッフでも腰や背中を傷めてしまうことが珍しくありません。腕や膝なども故障してしまう例もあり、負傷を理由に離職する職員が多いことも介護現場の大きな問題となっています。
介護職員が自分の身体を傷めずに仕事を続けられるためには、工夫が欠かせません。まず、腰や膝など介護業務で傷めやすい部位については、補装具を装着して肉体的負担を減らす方法があります。ウェイトリフティングでは、腰に巻く分厚いベルトが腰椎を守る上で有効です。また、それが難しい場合は、腰痛時に装着するコルセットなどもあり、役に立つ場面はあるでしょう。膝に着けるサポーターも同様です。ただし、人によっては装着部分の皮膚が痒くなったり、夏の暑い季節には装着すると蒸れて不快なので、常に装着することはおすすめできません。体重の多い利用者の移動の際だけ活用すると良いでしょう。
こうした補装具に頼らなくても、体幹を用いた効率的な介助方法を使えば、身体を傷めずに介助できるという意見もあります。具体的には、背筋を伸ばし脇を絞めて身体の正面で作業を行うと、バランスが取れて余計な負荷が身体の一部にかかるのを避けることができます。このスキルを身につけられると、小さな介護職員でも重い利用者を移動させることが可能になると言われています。